本研究は、農村地域におけるグループ起業化に関わる先行研究の検討と先進的事例の実態調査を通じて、今後のグループ起業化の展開が、都市・農村交流に与える影響について分析をおこなうものである。 今年度は、農村女性による起業化の動向に関する先行研究の検討のほか、秋田県と京都府における農村女性による起業化の実態等についての調査をおこない、以下のような知見を得た。 1.農産加工等から出発した農村女性によるグループ起業化の事例について、その多くが、生活改善グループの活動と普及活動との密接な連携に支えられて展開してきている。 2.生鮮野菜や農産加工品の販売を中心とする直売所での販売活動の中で、施設の規模にかかわらず、消費者との継続的な交流を重ねる中で消費者の要望をより的確に取り入れている場合に、販売金額が増加しているという傾向がみられた。 3.起業化の中心的な担い手の高齢化・後継者不足という問題は、いずれの地域においても共通する問題であり、そうした状況の下で今後の事業の展開を図るためには、行政による支援のほか、地域における他産業との連携とそれに基づいた経営の多角化が求められている。 起業化への取り組みが、都市住民の普遍的な「消費者ニーズ」を前提とした商品開発だけをおこなっっていたのでは、生産者と消費者のそれぞれが自己の利益のみを追求し、モノによる結びつきを重視するだけの交流にとどまってしまう傾向がみられる。農村と都市それぞれの住民による人と人との交流の蓄積の中から、今後の地域活性化の方向性を見出していくためには、「地域づくり」に関わる協同組合間提携等についての研究成果についても検討をおこなう必要がある。
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