研究概要 |
1.研究実施概要 閉鎖系空間内における植物生産の自動化を目途とし,植物生体情報を積極的に活用した成長モデルをシステム同定法により構築することが目的である。平成12年度にひき続き次のような実験および解析を行った。 ・人工気象器を使用したレタス栽培実験(各種環境計測およびレタス生育状態測定)。 ・生体画像情報の解析。 ・生体情報と栽培環境との関係の解析。 2.研究成果 (1)栽培・計測システムの構築 人工気象内に気温,湿度,光量子束密度,二酸化炭素濃度,養液pH,養液ECの各種センサおよびビデオカメラを設置し,これらを計測用コンピュータに接続して栽培環境とレタスの水平投影画像の時系列データを計測できるようにした。 (2)栽培実験 実験毎に人工気象機内でレタス1株を栽培した。栽培期間は21日間である。この期間中,サンプリング周期を1時間として上記測定項目を測定・記録した。栽培環境設定は光強度のみを変動させ,その他の環境は一定を保った。平成12年度は明暗周期をM系列信号に沿ってプログラムし,成長モデルのシステム同定が可能であることを示した。しかしこの光環境は実際の栽培現場では見られない。そこで平成13年度では植物工場現場の光環境に近くなるように明期および暗期をそれぞれ12時間に設定し,この条件でもシステム同定が精度よく行えるかどうかを検討した。この実験により光量子束密度を入力,レタス画像情報を出力とする1入力1出力のレタス成長システム解析のための基礎データを収集した。 (3)画像解析 レタスの水平投影画像をコンピュータで処理し,数十種類の画像特徴量を計算した。これと実際の生体重を対応させ,重回帰分析によってレタス画像からレタス生体重を非接触かつリアルタイムで測定できるようになった。得られた重回帰式は非常に高い有意性(1%)を示し,精度よく生体重推定ができた。 (4)生体情報と栽培環境との関係の解析 画像処理で測定したレタス生体重と光量子束密度の時系列データをシステム同定法を使用して解析した。今回の入力信号は特定の周波数帯にしかパワーが存在しないため,本来存在するはずの周波数帯が欠けていた。しかし,逐次最小二乗法を適用し,ARXおよびARMAXモデルによって推定精度のよい伝達関数が同定できることがわかった。 以上の結果,光環境を入力とするレタスの成長システム同定が可能であることが明確になった。これにより完全制御型の植物工場現場における,画像情報を使用したレタス生体重の逐次予測が可能であることが示された。
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