研究概要 |
一般に寒地型牧草をサイレージ調製した場合,乳酸菌が材料草の可溶性の糖を分解して乳酸を生成し,高乳酸含量の良質サイレージになる。一方暖地型牧草では可溶性の糖含量が低いため,乳酸は十分生成されず,低乳酸含量となるが,安定して貯蔵され,また多量の酢酸を含む,即ち「酢酸発酵型」サイレージになることがある。しかしこれまで暖地型牧草から「酢酸発酵型」サイレージが調製される要因に関する報告は少ない。そこで本研究代表者は,それらの要因について,まずヘミセルロースの分解に着目した。ヘミセルロースは主に五炭糖で構成され,五炭糖はヘテロ発酵されて乳酸と酢酸をそれぞれ1分子ずつ生成する。また五炭糖を添加してサイレージを調製すると酢酸含量が高くなるという報告例があり,本研究代表者の先の研究において,ギニアグラスサイレージが「酢酸発酵型」を示すとともに,ヘミセルロースの消失率が高いことを併せて示している。これらのことから暖地型牧草サイレージではヘミセルロースの分解と酢酸生成の関与が考えられる。そこで今年度は,暖地型イネ科牧草のギニアグラスを供し,放射性同位元素の^<14>Cを用いて標識植物体を調製した後,細胞壁構成成分のヘミセルロースの標識確認を行った。標識植物体の調製は,ワグネルポットで開花期まで栽培した後,^<14>CO_2を取り込ませ,刈り取り,乾燥し,粉砕して行った。ヘミセルロースの標識確認は,粉砕試料をα-アミラーゼおよび有機溶媒で処理して細胞壁を調製し,2N硫酸加水分解溶液の放射線量を液体シンチレーションカウンターで計測して行った。以上の操作により,ヘミセルロース中の炭素原子の一部は^<14>Cにより標識されたことが確認され,来年度この植物体のヘミセルロースを用いてサイレージを調製し,発酵に伴うヘミセルロースの消失と酢酸生成について検討する予定である。
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