初期胞状卵胞(直径0.5〜1mm)内の卵母細胞のうち、発育培養後に卵丘卵子複合体(COC)の状態で回収された卵母細胞の直径は、4日間培養(103μm)よりも8および14日間培養(113μmおよび117μm)で有意に大きかった。4日間培養した卵胞の卵母細胞は、成熟培養によって少数が減数分裂を再開したが第2減数分裂中期に達したものはなかった。また、8日間発育培養した場合、成熟培養後に卵母細胞は40%が第二減数分裂中期に達した。このことから、本研究の培養条件下で初期胞状卵胞内の卵母細胞が成熟能を獲得するためには、4日間の卵胞発育培養では不十分であり、少なくとも8日間の培養が必要であることが明らかになった。しかし、10および14日間培養後した卵胞の卵母細胞の核相は、第一減数分裂中期以降には進まなかった。本実験において、卵胞発育培養期間が延びるにつれて、COCの状態で回収される卵母細胞の割合は減少したことから、培養期間の延長に伴い卵胞が変性したため、卵母細胞の成熟能が低下したものと考えられた。 一次卵胞培養後の卵母細胞生存率は69%であり、45%の卵胞は、培養後も正常な形態を維持していた。培養後も形態的に正常な卵胞内の卵母細胞は全て生存していた。一方、培養後に形態異常と判定された卵胞内の卵母細胞の生存率は43%であった。正常な形態と異常な形態の卵胞の培養後の長径に差異は認められないものの、培養後の総顆粒層細胞数は正常卵胞の方が有意に多く、同一長径の体内発育卵胞とほぼ同じ数まで増加しいた。培養後に異常な形態を示した卵胞は変性過程にあり、顆粒層細胞の分裂増殖が低下あるいは停止した結果、細胞数は少なくなり、変性によって卵母細胞あるいは顆粒層細胞が膨化したため、正常卵胞と同等の長径を示したものと考えられた。
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