1.様々な方法を及び薬剤を用いて、効率的でまた細胞への毒性の少ない細胞周期同調法のスクリーニングを行った。G0期への同調法として0.5%の血清濃度で培養を行う血清飢餓培養法、S期へは7.5mMのチミジン処理法、G2期へは1μg/mlのトリコスタチンA処理法、M期へは3μg/mlのノコダゾール処理法が細胞毒性の少ない適切な処理法であることが明らかとなった。 2.1において適切に同調された細胞をドナーとして用いて核移植を行った。すなわち卵細胞質は、第二減数分裂中期の卵細胞質(M期)とその卵細胞質に活性化刺激を与えた活性化卵子(S期)をレシピエント卵細胞質としてそれぞれドナー細胞を融合し体外発生能を検討した。核移植卵の体外発生成績は、レシピエント卵細胞質に第二減数分裂中期の卵細胞質(M期)を用いた場合、ドナー細胞がS期以外のすべての組み合わせにおいて胚盤胞期までの発生が確認された。また、M期卵細胞質に活性化刺激を与えた活性化卵子(S期)を用いた場合、すべての組み合わせにおいて8細胞期以降への発生は阻害された。 3.2において作出された核移植卵において、ドナー細胞及びレシピエント卵細胞質にM期を用いた組み合わせによって得られた核移植卵を受配雌に移植検査を行った結果、産子を得ることに成功した。これらのことにより、ウシ体細胞核移植においてドナー細胞にG0期を用いることが重要なのではなくドナー細胞とレシピエント卵細胞質の細胞周期の組み合わせが重要であることが明らかとなった。また、体細胞核移植には胚性細胞核を用いた核移植とは異なり、M期のレシピエント卵細胞質を用いることが重要であることが明らかとなった。
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