本研究は精巣形成不全症(HGN)ラットの原因遺伝子(hgn)を、ポジショナルクローニング法あるいはポジショナルキャンディデート法により同定しようと言うものである。本年度は、HGN系統とBrown Norway系統との間の外交配から得られたF1とHGN系統のhgn/hgnとの戻し交配で得られた約600個体の雄について、hgn遺伝子座周辺のマイクロサテライトを用いてタイピングを行い、hgn存在領域を含むファインマップを作成した。同時にRat/Hamster Radiation Hybrid Panelを用いてhgn存在領域のRHマップを作成した。これらの結果から、hgn遺伝子座がD10Rat30とD10Rat68との間の約0.36cM(22.6.cR)の領域に存在し、D10Rat69、D10Arb9(Aldo3)、およびwhn(winged helix of nude)遺伝子座と完全連鎖していることが判明した。この情報をもとに、YAC(酵母人口染色体)ライブラリーをPCRでスクリーングしたが、選択したYACライブラリーからはhgn存在領域を網羅する単一のクローンを見いだすことはできなかった。来年度は、複数のクローンによるコンティグを完成させるべくスクリーニングを行うと同時に、由来の異なるYACに関してのスクリーニングを検討している。また、ラット第10染色体のhgn存在領域と相同なマウス第11染色体上の領域にマップされている複数のEST(D11Ertd18e、D11Ertd250e、D11Ertd72eなど)あるいは機能的遺伝子(Ywhae、Supt6h、Ube2b-rs2など)について、精巣での発現の調査、シーケンス、サザンによるタイピング等を行ったが、現在までのところ有力な候補は見出されていない。来年度も引き続き候補遺伝子検索を継続する予定である。
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