1.生体における軟骨代謝マーカーの測定法の最適化 健康犬および関節疾患発症犬の血清および関節液中軟骨基質代謝マーカーの測定を最適化した。グリコサミノグリカン濃度の測定にはジメチルメチレンブルー比色定量法を、II型プロコラーゲンCペプチド(コンドロカルシン)の測定にはビーズ法によるサンドイッチELISA法を用いた。 2.実験的変形性関節症モデル犬の作出 イヌに実験的な変形性関節症を発症させるために、健常犬の膝関節に実験的に不安定症をおこさせ、その関節に周期的な機械的運動負荷をかけることにより、初期の変形性関節症を誘発した。具体的には、ビーグル犬5頭の左膝関節前十字靭帯を関節鏡下で切断し、手術創の炎症が消退後、1日30分間の強制運動を負荷した。12週間定期的に、単純X線検査、X線CT検査、関節液検査を実施し、関節内の病態を評価した。また、動物を安楽殺後、関節内構造の組織学的評価を行った。すべての犬で目的通り、軽度の変形性関節症が確認された。関節液グリコサミノグリカン濃度は術後2週目に有意に低下し、関節液コンドロカルシン濃度は術後7日目に有意に増加した。一方、X線CT検査では術後14日目に、単純X線検査では同42日目にわずかな石灰化病変が確認された程度あった。 今回得られた結果から、関節軟骨代謝マーカーである関節液グリコサミノグリカン濃度および関節液コンドロカルシン濃度は、関節症時の病態を比較的早期から反映し、関節症の診断・病態把握に有益な情報を与えうることが強く示唆された。
|