研究概要 |
本研究計画を申請した時点で既に,in vitroで血流型虫体から昆虫型虫体に変態させたアフリカトリパノソーマ原虫を抗原として10クローンの単クローン抗体を作製が終了していた.(J.Vet.Med.Sci.,62巻,1041-1045ページ,2000年にて報告).また,トリパノソーマ原虫昆虫型虫体のcDNAライブラリーも既に作製が終了しており,平成12年度は以下の三つの事項に重点を置いて研究を行った;(1)これまでに作成した単クローン抗体が認識する抗原蛋白質の遺伝子クローニングならびに全塩基配列の決定・(2)免疫電子顕微鏡法ならびに共焦点レーザー顕微鏡を用いた単クローン抗体が認識する抗原蛋白質の原虫細胞内での局在性の解明・(3)昆虫型虫体と血流型虫体における抗原蛋白質の発現を蛋白質レベルと遺伝子レベルの両方について解析し,昆虫型虫体で新たに発現されたり,血流型虫体と比べて発現が増強される抗原蛋白質を明らかにする. 作成した全ての単クローン抗体についてその反応局在性および反応の種特異性を決定した結果,反応局在性については,全ての原虫発育ステージで局在性が同じであった抗体と,発育ステージ間で局在性が変化する抗体があることが明らかとなり,種特異性については,トリパノソーマ属の原虫に広く交叉反応性を示した抗体と,トリパノソーマ コンゴレンセ特異的に反応する抗体があることが明らかとなった. 次に,交叉反応性で発育ステージ間で反応部位が変化しない抗体(4D4),交叉反応性であるが反応部位が変化する抗体(10F9)ならびに種特異的で反応部位が変化する抗体(20H12)を用いてcDNAライブラリーをスクリーニングし,抗原遺伝子のクローニングに成功した.その結果,4D4抗体はトリパノソーマのリボソームP0サブユニット蛋白質を認識し,P0蛋白質をコードする遺伝子(アクセッション番号AB056702)は全長1035bpでイントロンを含まず,ゲノム中に220bpのスペーサ配列をはさんで2コピー存在することが明らかとなった.10F9および20H12を用いて得られたcDNAクローンについても同様に解析を進めているが,今後の研究の発展が大いに期待できる.
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