研究課題
土壌の重金属汚染を緩和させる機能を持った微生物を分離するため、土壌から重金属耐性微生物の分離を試みたところ、緑色コロニーを形成する微生物を得ることができた。細胞は球形で直径5-8μm。蛍光顕微鏡で観察すると、赤く発色したのでクロロフィルを持つことが予想された。18SrRNA遺伝子の塩基配列を決定し類似性を検索すると、分離菌はクロレラであることがわかりChlorella sorokinianaANA99と命名した。このクロレラは300ppmのカドミウムの存在下で生育することが確認された。蒸留水(pH7)中でのカドミウム、亜鉛、銅における72時間後の吸着特性を調べてみると、乾燥菌体1mg当たりそれぞれ7.2、7.0、2.5μgを吸着し、他の微生物に比較すると多くの重金属を吸着する性質があることがわかった。さらにカドミウム障害を起させた稲にクロレラを添加し、障害の低減効果を調べた。稲をCd5ppm(0.75mg)を含む水溶液で生育させると、生育は対照の70%に抑制されるが、1.67g(生菌体)のクロレラを添加すると104%に回復させることに成功した。カドミウムは稲に吸収されるよりは、クロレラの細胞に優先的に吸収されることを示唆している。本クロレラは3%グルコースを含むYPD培地を用いた暗黒振盪培養にて30℃、4日で湿重量として50gを得ることができる。クロレラの土壌へ定着させる技術が確立されれば、カドミウムの拡散を防ぎ、作物の重金属障害緩和が可能になると考えられる。
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