本研究の目的は、炎症による白血球の血管外遊走のメカニズムを形態学的手法を用いて解析することにある。そのために、局所的に走化因子を投与し、細静脈内における白血球の遊出過程を免疫組織化学的手法も用いて、電子顕微鏡による解析を行った。まず、マウスの口唇に白血球走化因子のひとつであるN-formyl-Methionyl-Leucyl-Phenylalanine(fMLP)を投与し、経時的に白血球が細静脈の内皮に接着し内皮細胞の細胞質を貫き、血管内皮と基底膜の間に一時とどまり、血管外に遊走していく像を電子顕微鏡で確認した。次に、白血球が遊走していく過程において、接着分子のひとつであるβ2インテグリンの白血球における局在の変化を観察した。具体的には、血管内皮に接着している白血球が抗インテグリン抗体で陽性に染色されることを光学顕微鏡観察で確認した後、金コロイドを用いて電子顕微鏡観察を行った。血管内皮に粘着した白血球では粘着部位にβ2インテグリンが多く存在し、内皮を貫きつつある白血球では基底膜側に多くあり、内皮と基底膜の間にとどまる白血球は内皮側と基底膜側の両者に分布していた。さらに、白血球が細胞質を狭小化させて基底膜よりを通過しつつある過程では内皮側にβ2インテグリンが多く存在していた。以上の結果から、生体において刺激された白血球が血管内から血管外に遊走していく過程において、接着分子の局在はダイナミックに変化することが明らかになった。
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