カベオリン-1遺伝子の転写調節の分子メカニズムを解明していく上で、まず実際の発現調節を観察することが重要であると考え、今年度はカベオリン-1mRNAおよびタンパクの発現について組織および細胞種間の比較を主として行った。その結果、細胞種特異的な転写調節領域や転写因子の同定のための好材料をいくつか得ることができた。 1.カベオリン-1mRNAの発現解析 これまでにRNaseプロテクションアッセイによってカベオリン-1の2つのmRNA(FLと5′V)を定量的に解析する方法を確立し、ウエスタンブロットによるカベオリン-1タンパクのアイソフォーム(αとβ)の検出結果と比較することにより、 (1)カベオリン-1の2つのアイソフォームの発現比率が組織・細胞種によって異なること (2)2つのアイソフォームの発現はmRNAレベルで調節されていること を明らかにした。特にマウス肺の発達過程において、カベオリン-1のアイソフォームの発現が別個に調節される現象を見いだした。今後免疫組織染色法やin situハイブリダイゼーション法などの組織学的解析も組み合わせて詳細に解析を進める。 2.カベオリン-1遺伝子の各細胞種特異的シスエレメントの同定 現在までに、マウスカベオリン-1遺伝子の2つのプロモーター領域のゲノムDNAを単離し、プロモーターアッセイ法に用いるプラスミドコンストラクトの作成を終えた。今後1.で見られたmRNAの転写調節に関わるシスエレメントを各細胞種毎に同定する。
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