研究概要 |
視細胞のクレアチンリン酸シャトル機構を明らかにするために,免疫細胞化学によって視細胞におけるクレアチンキナーゼの分布を検討した. 脳型クレアチンキナーゼ(B-CK)に対する抗体を用いた免疫細胞化学によって,B-CKがラット・マウス・ウシなどの視細胞外接部分と内接部分に存在することが明らかになった.B-CKは視細胞内接のミオイドには分布していなかった.視細胞外接部分にB-CKが比較的多く存在するという結果は,外接・内接間のクレアチンリン酸シャトル機構の存在を強く示唆している. 一方ミトコンドリア型クレアチンキナーゼ(Mi-CK)はコマーシャルに手に入らないので,抗体を作製した.ラットのMi-CKのC末アミノ酸配列を抗原として,ウサギ2羽に免役して抗体を作製したが,できた抗体はどちらもB-CK・Mi-CKの両方と反応してしまい,Mi-CKに特異的な抗体は作製できなかった.これは抗原として選択したエピトープに原因があると考えられる.クレアチンキナーゼファミリーのアミノ酸配列のホモロジーはサブタイプの中では90%以上,サブタイプ間でも60%以上と高く,しかも四量体もしくは八量体を形成するので,分子内アミノ酸配列に対して反応できる抗体のエピトープを選択するのが困難であった.そのため分子のN末もしくはC末のアミノ酸配列を選択せざるを得ないが,それらの配列はサブタイプ間で30%程度のホモロジーがあった.このために今回選択したC末のアミノ酸配列を抗原とした抗体は交差反応を示したと考えられる.次年度は分子内アミノ酸配列でかつ分子表面に露出していると考えられる配列を選択してMi-CKに対する抗体を作製する.
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