研究概要 |
血管の機能や微細構造はその部位によって多様であり、その内面を覆う内皮細胞も、臓器・組織ごとにそれぞれ異なった性質を有しているはずである。そこで本研究では、「臓器・組織特異的な内皮細胞」として、腎糸球体毛細血管内皮細胞の培養株を樹立し、その細胞種特異的な性質を精密に解析することを目的とする。 本補助金の支援を受けて昨年度より、2系統のトランスジェニックマウス(分与および購入)を掛け合わせてF1の仔を得、そこから腎糸球体を単離して培養している。現在、糸球体由来の細胞の中から内皮細胞だけを選択的に選び出してクローン化・株化する作業を進めている。現時点ではまだ培養株の樹立には至っていない。今後、早期に培養株を確立し、それを用いて微細形態や細胞内情報伝達系の特性に関して解析する予定である。なお、マウスの繁殖と掛け合わせは、愛媛大学医学部附属実験動物施設のトランスジェニックマウス専用飼育室にて、本学の「実験動物取り扱い指針」に沿って行っている。 本研究に関連して、糸球体足細胞の培養株を用いた細胞機能の解析方法について総説を発表した(小林,200;Kobayashi,2002)(足細胞は、内皮細胞とともに糸球体濾過障壁を構成している。この培養株は「条件的不死化遺伝子」を持つトランスジェニックマウスから樹立されたもので、本研究のプロトタイプとなっている)。さらに、足細胞の培養系を用いてその形態形成の仕組みを分子レベルで解明し、これらの成果を国際誌に発表した(Kobayashi et al.,2001a,2001b)。
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