研究概要 |
肝臓造血の推移にともなう肝臓内鉄含有細胞の分布の変化を明らかにする目的で,胎生11日から19日のICRマウス胎子の肝臓を用いて実験を行った.肝臓の1.5μm厚テクノビット7100切片で,フェロシアン化カリウムを用いたベルリンブルー法ならびにフェリシアン化カリウムを用いたターンブルブルー法により肝臓内に存在する2価および3価の鉄イオンを染色し,その局在を観察した.肝臓造血開始直後の胎生11日において鉄染色陽性反応を示すのは,類洞腔マクロファージの食胞の一部と循環原始赤血球細胞質に含まれる小型顆粒である.造血が最盛期となる胎生14日においては赤芽球島中心マクロファージの大型食胞の一部に陽性反応がみられ,大型で明るい核と明瞭な核小体を持つ肝細胞細胞質にもごく少数染色顆粒が認められる.このほか造血巣内の様々な成熟段階にある赤芽球や類洞腔内の恒久型赤血球において鉄染色陽性顆粒が認められる.造血退縮期である胎生19日には多くの赤芽球島中心マクロファージの食胞において大小さまざまな陽性顆粒がみられ,このほか赤芽球や恒久型赤血球に染色顆粒が観察される.以上のような光顕による定性的観察に加え,今後さらにX線元素分析装置を装着した透過電顕による観察を行い,鉄元素の定量的な解析を試み,最大の胚内造血器官として機能する肝臓において,鉄元素の含有量と分布を指標として肝臓造血の変動を解析する計画である.
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