スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)は細胞の遊走、形態変化、増殖など多彩な生理活性を示す脂質である。これまでに私たちはクローン化したS1P受容体(EDG1、EDG3、EDG5)を安定発現した培養細胞の解析から、(1)EDG1は主としてGi蛋白質を介してホスホリパーゼC(PLC)の活性化、Ras/MAPキナーゼの活性化、アデニル酸シクラーゼの抑制に共役していること、(2)EDG3はGq蛋白質を介してPLCの活性化、Gi蛋白質を介してRas/MAPキナーゼの活性化及びアデニル酸シクラーゼの抑制に共役していること、(3)EDG5はGq蛋白質を介してPLCの活性化、Gi蛋白質を介してRas/MAPキナーゼの活性化、Gs蛋白質を介してアデニル酸シクラーゼの活性化に共役していることを見出した。今回、EDG5の情報伝達に関わる分子内のドメインを明らかにするため、受容体の細胞内C末端領域を様々な長さに欠失させた変異体、および受容体サブタイプ間でキメラ体を作成し、それらの情報伝達能を検討した。その結果、(1)EDG5のGqを介したカルシウム動員には、EDG5のC端61個のアミノ酸が必要であること、(2)EDG5のGiを介したERK活性化には、EDG5のC末端から50〜61番目のアミノ酸領域が必要である。しかし、Giを介したカルシウム動員には、EDG5のC端61個のアミノ酸が必要でないことから、Giを介したERK活性化とGiを介したカルシウム動員にそれぞれ必要とされる領域は一致しないこと、(3)EDG5のGsを介したcAMP産生には、EDG5のC末端から50〜61番目のアミノ酸領域が必要であることが示唆された。
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