研究概要 |
申請者により,血管条辺縁細胞の基底側膜には細胞体積と関連するCl^-チャネルが豊富に発現しており,このCl^-チャネルが内耳機能の発現に不可欠であることが明らかになっている.イオン選択性からこのチャネルがClC-superfamilyの一員であると示唆されたが,細胞体積との関連が報告されているClC-2とClC-3のどちらの電気生理学的特徴も,辺縁細胞のCl^-チャネルのものとは一致しない.そこで本研究費(初年度)により、辺縁細胞に局在しているCl^-チャネルm-RNAの同定(single-cell RT-PCR法による)を行なったところ,血管条組織レベルではClC-superfamilyのうちClC-2,-3,-5,-Klのm-RNAの発現を確認し,ClC-Klについてはsingle-cell RT-PCRを行い、辺縁細胞の単一細胞レベルでの発現を証明した。 そこで,m-RNAレベルで血管条に発現が確認されたClC-2,-3,-5,-Klついて、免疫組織化学的手法によりその局在を明らかにすることを試みた。ClC-Klについては,特異的な抗体が入手困難であったので、チャネルタンパクに特異的なアミノ酸配列の合成オリゴペプチドに対するウサギポリクローナル抗体を作製して検討した.その結果,血管条組織レベルでClC-2,-3,K1の陽性反応を得た.ClC-5については現在検討中である.ClC-2,-3については,辺縁細胞においてClC-Klとの共発現の可能性があるため,単離血管条細胞を用いて再検討を始めている. 以上の結果より,血管条辺縁細胞にClC-superfamilyの一部が発現していることが判明した.今後,遺伝性難聴を含めたの内耳病態とCl^-チャネルとの関わりを解明していく必要がある.
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