容積感受性Cl^-電流は細胞の体積が正常であるときには全く見られず、細胞が低張浸透圧下で膨張した後の調節性容積減少(regulatory volume decrease: RVD)過程でのみ観察される。容積感受性Cl^-チャネルの候補蛋白質を精製する目的で、RVD過程での本チャネルの開口に細胞内外のATPが必要であることを利用して、ATPアフィニティーカラムクロマトグラフィーを行った。実験には容積感受性Cl^-電流が非常によく観察されるヒト小腸由来の上皮細胞であるIntestine407細胞を用いた。 実際にはRVD過程にない細胞から抽出した膜蛋白質を用いてコントロールとし、RVD過程にある細胞を用いた場合のカラム溶出画分中にコントロールより高いATP結合能を示す蛋白質が見られるかを検討した。このカラムクロマトグラフィー実験では至適条件を色々と試し決定する必要があったことと、溶出される蛋白質量が極めて少なく、チャネル候補蛋白質を回収するためにカラム実験を数多く繰り返さなければならなかったことが原因で、蛋白質のアミノ酸配列解析にいたるまでに非常に長い時間を費やす結果となった。 現在本チャネル候補としてのATP結合蛋白質が1つ見つかっており、アミノ酸配列を解析した結果、今までに報告されていない新規な蛋白質であることがわかった。今後はこの蛋白質のcDNAの単離を行い、できるだけ早く一次構造を決定する。さらに発現実験等によって機能解析を進めていく予定である。
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