我々はミッドカインが血管内膜肥厚の形成に対して促進的に働くことを予測し、in vivo動物モデルを用いてその影響を検討するべく、本計画を開始した。その第一段階として、光増感反応法を用いることにより、トランスジェニック動物の系統である129svjマウス野生型の大腿動脈に血管内膜肥厚を作成することに成功した。そして次の段階として、ミッドカイン欠損マウスに同様の手法を用いて血管内膜肥厚を作成し、その内膜/中膜断面積比を野生型のものと比較することによってミッドカインが生体内で果たす役割を検出するべく、実験を継続している。 またこれと並行して我々は、ミッドカインが血管内膜肥厚に影響を及ぼすメカニズムを考える目的で、培養細胞に対するin vitroでの作用を検討した。上記と同じ129svj系マウス大動脈から採取した平滑筋培養細胞を用い、Boyden-chamber法によって遊走能を検討したところ、ミッドカインは単独では影響しない一方、血小板由来増殖因子PDGFによって惹起される遊走能を増強する効果があることが解った。この結果は、第74回日本薬理学会年会において発表される(2001年3月21〜23日、横浜)。PDGFによる遊走刺激のシグナル伝達路は(1)増殖シグナルと共通のMAPキナーゼを介する経路、(2)Phospholipase C-γ→カルシウム/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼを介する経路、(3)Phosphatidylinositol 3'キナーゼを介する経路、の主に3つが現在までに提唱されている。我々はミッドカインがそのうちどの経路に影響を及ぼすか、に主眼を置いて検討を進めている。
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