創傷治癒時に急性炎症反応にひきつづいて形成される肉芽組織の内部にはmyfibroblastとよばれる平滑筋と極めて類似した、fibroblastから分化した細胞が数多く含まれていることが明らかになっている。myofibroblastはα-smooth muscle actinを含むことを特徴とし、このため強い収縮力を発揮し創傷の収縮、治癒に大きな役割を担づていることが明らかになってきた。創傷治癒の過程において、myofibroblastはアポトーシスによりその数を減じていくのであるが、myofibroblastのアポトーシスについての知見は現在まで殆ど報告されていない。 我々の研究室ですでに確立している方法に従って、ラット背部皮下にクロトン油を注入することにより皮膚由来のmyofibroblastを豊富に含ん落肉芽嚢を作製し、その肉芽嚢よりmyofibmblastを分離・培養し、他の幾種類かの細胞ですでにアポトーシスを誘導することが明らかになっている、スタウロスポリンを用いてmyofibroblastへの効果を検討した。スタウロスポリンは濃度・時間依存的にmyofibroblastにアポトーシスを引き起こし、アポトーシスの特徴とされる核の分葉化、クロマチンの凝集が認められた。また、スタウロスポリンによりアポトーシスのキイエンザイムであるカスパーゼ3の活性化が引き起こされることも確認した。myofibroblastに特徴的にみられるα-smooth muscle actinがアポトーシス誘導時に分断され、これが活性化されたカスパーゼ3によるものであることを明らかとした。さらに、アポトーシスを誘導しにくいとされるmyofibroblastにアポトーシスを誘導する物質としてスタウロスポリンのほかに、抗がん剤であるシスプラチンとブレオマイシンがあることを見出した。
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