研究概要 |
Naチャネルの細胞膜発現調節機構におけるMitogen-activated protein kinase(MAPK)ファミリーの役割を解明するために、発生学的に神経堤に由来する培養ウシ副腎髄質クロマフィン細胞を用いて実験を行い、以下の結果を得た。 1.血清除去によるMAPKファミリー活性の変動とMEK阻害剤(PD98059,U0126)の影響 培養ウシ副腎髄質クロマフィン細胞では、恒常的にMAPKファミリー[Extracellular signal-regulated kinase 1/2(ERK1/2),p38 MAPK,Stress-activated protein kinase(SAPK)]が活性化されていた。培養液の血清を除去すると、ERK1/2の活性は著しく低下したが、P38MAPKおよび、SAPKの活性は変化しなかった。一方、ERKを活性化するMEKの特異的阻害剤であるPD98059、あるいはU0126を正常培養液中に添加すると、血清除去と同様にERK1/2のみの活性が低下した。 2.血清除去、あるいはMEK阻害剤(PD98059,U0126)によるNaチャネル発現量の変動 血清除去、あるいはMAPK阻害剤添加により、ERK1/2の活性化を抑制すると、細胞膜Naチャネル量が著しく増加した(12時間で、約1.5倍)。この時、Naチャネルのα-およびβ_1-サブユニットmRNAレベルも同様に1.5倍に増加した。 以上の結果から、血清中に含まれる何らかの因子が、MAPKファミリーのERK1/2の活性化を介してNaチャネルの遺伝子レベルを変動させることにより、細胞膜のNaチャネル発現量を調節していることが示唆された。次年度は、ERK1/2によるNaチャネルの遺伝子発現調節機構をさらに詳細に検討するとともに、ERK1/2の活性化を介してNaチャネルの発現調節をもたらす血清中の細胞外因子の同定を試みる予定である。
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