近年、細胞内情報伝達において主要なリン酸化酵素であるプロテインキナーゼC(PKC)は様々な疾病において楚の発症や進展に関与すると考えられ、10種類以上のPKCサブタイプに対する阻害薬が種々の病態の治療薬として注目されつつある。その中でも、PKC-βと糖尿病の関連が注目されてきた。本研究ではPKC-βがどのような機序で、どの細胞機能に関与しているかを、ターゲッティング機構を指標として解析し、PKC-βの生理機能や活性化機構を明らかにすることを目的としている。 GFP標識PKC-βIおよびIIの培養細胞におけるトランスロケーションの解析 1 PKC-βIおよびIIのC末端あるいはN末端に蛍光蛋白であるGFPを結合させたcDNAを発現ベクターに組み込み、CHO-K1細胞に発現させた。GFP融合PKC-βは、他のPKC-β発現細胞系と同様な細胞内局在を示した。また、GFPの蛍光像とPKC-βの局在が一致することも確認した。 2 ホルボールエステル処置、受容体刺激(UTP等)、カルシウム刺激などによって変化するPKC-βの細胞内局在を共焦点レーザー顕微鏡で経時的に観察した。その結果、無刺激の場合、細胞質全体に認められたPKC-βはホルボールエステル処置により、徐々に細胞質膜へ集積する不可逆的なトランスロケーションが観察された。また、UTPによるプリン受容体刺激により、細胞質から細胞質膜への一過性のトランスロケーションが観察された。カルシウム刺激によっても同様に膜への一過性のトランスロケーションが認められた。
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