癌細胞の運動性亢進の原因のひとつとして、ミオシンなどのモーター分子の機能異常が考えられている。生体内には、筋肉細胞に見られるミオシン以外に、unconventionalなミオシンが多数存在する。unconventionalなミオシンは細胞膜構成分子の輸送や細胞骨格の再編成を制御していると考えられているが、その制御機構についてはほとんど解明されていない。そこで、本研究はunconventionalなミオシンによる細胞運動の制御機構を解明することを目的としている。この目的を達成するために酵母のunconventionalなミオシンであるMYO5遺伝子の生理機能の解明を試みている。 (1)酵母MYO5遺伝子に変異を導入することにより、myo5温度感受性変異株を得ることに成功した。このmyo5温度感受性変異株に変異をランダムに導入することにより、myo5温度感受性変異と合成致死になる遺伝子変異を得ることに成功した。このようにして得られた遺伝子はMYO5と遺伝学的に相互作用する新規遺伝子である可能性が高い。この新規遺伝子の生理機能を解析することにより、MYO5の機能の詳細が解明されると考えている。 (2)Myo5p結合蛋白質をtwo-hybrid法により探索した結果、SH3ドメインやプロリンリッチドメインを含む新規Myo5p結合蛋白質の同定に成功した。この新規Myo5p結合蛋白質がアクチンとほぼ同じ局在を示し、アクチン重合の制御に関与しているWiskott-Aldrich syndrome protein(WASP)-interacting proteinと結合することも明らかになった。したがって、この新規Myo5p結合蛋白質がアクチン細胞骨格の再編成に重要な役割を果たしている可能性が高いと考えられた(投稿準備中)。 以上により、平成12年度の研究計画はほぼ達成されたと考えられる。
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