糖代謝系酵素のL型ピルビン酸キナーゼ(PKL)遺伝子と脂質代謝系酵素であるS14遺伝子のプロモーター領域には炭水化物応答性エレメントが存在し、グルコース濃度の上昇に依存して転写が促進される。このエレメントに特異的に結合する因子であるL-IIIBPのcDNAのクローニングを行い、炭水化物による遺伝子の転写促進機構を解明することを目的として本研究を行った。 L-IIIBPは、350匹のラット肝核抽出液から、26kDaと24kDaの2本のバンドとして精製された。しかし、量的な問題で精製蛋白質からアミノ酸配列が得られなかったため、至適化した炭水化物応答性エレメントを餌にして、イーストのone-hybrid systemを用いて、ラット肝および顆粒膜細胞cDNAライブラリーのスクリーニングを行った。その結果、肝cDNAライブラリーからはポジティブクローンを得られなかったが、顆粒膜細胞cDNAライブラリーからは、Upstream Stimulatory Factor 2(USF2)がクローニングされた。ラットUSF2 cDNAに関しては完全長の報告がなかったため、クローン化したcDNAの塩基配列の決定、ホルモン処理を行った卵巣における遺伝子発現の検討、ゲルシフト法によるDNA結合特性、ならびにHepG2細胞へのコトランスフェクション法による転写活性化能の検討を行い、USF2は346個のアミノ酸配列から成り、E box配列に依存してDNA結合ならびに転写活性化を行うことを報告した。 次に、PKL遺伝子の炭水化物応答性エレメントであるL-IIIエレメントを餌にして、前述のcDNAライブラリーをスクリーニングしたところ、肝cDNAライブラリーからのみ8つのポジティブクローンが得られた。これらのポジティブクローンはすべてHaematopoietically expressed homeobox(Hex)とよばれる転写因子をコードしていた。現在、HexがPKL遺伝子の転写にいかなる影響を及ぼすかについて、ラット分化型肝癌細胞株を用いて、Hexの発現ベクターとPKL遺伝子のリポーターベクターをコトランスフェクションを行うことにより、検討中である。
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