研究初年度の本年は、破骨細胞分化の基本制御因子RANKLおよびその受容体RANKの発現調節機構とその下流シグナルの基礎的な解析を以下の如く行った。 1)ヒト前骨髄球性白血病細胞株であるHL-60を活性型ビタミンDおよびTPAで刺激することにより破骨細胞/マクロファージ系への分化を誘導すると、RANK mRNAの発現が著明に誘導された。 2)上記のRANK発現誘導は機能的なRANKタンパクの細胞膜への発現を伴うことがMBP-RANKLを用いたin vitro結合アッセイにより確認された。 3)この分化誘導刺激の際、gel shift assayでみたAP-1結合能の活性化がRANKの発現にやや先立って起こった。 4)上記のAP-1の活性化はc-fosの発現そのものの上昇をも伴っていた。 一方、RANKの下流シグナルに関しては、 5)上記の如くRANKの発現を誘導したHL-60細胞をRANKLで刺激すると、AP-1およびNF-kB活性が上昇することがgel shift assayにより確認された。 6)RANKLの直接の標的遺伝子についてはほとんど知られていないが、上記のRANKを発現したHL-60細胞をRANKLで刺激すると、RANKの発現が上昇することが明らかとなった。これはRANKのシグナルが破骨細胞分化を促進するとともに、分化段階が進むにつれてRANKそのものの発現も高まるというpositive feedback機構の存在を示唆する。 これらの知見をもとに、破骨細胞分化、あるいはRANKLの直接刺激に伴うRANKの発現誘導がc-fos自身に依存するか否か、さらにNF-kBの活性化そのものにc-fosが関与するか否かを明らかにするため、現在、c-fosノックアウトマウスを用いた検討を進めている。
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