本年度はブタ腎臓上皮細胞由来細胞株LLC-PK_1の細胞内cAMPを上昇させる活性を持つ新規生理活性ペプチド生理作用の検討を行った。まず第一段階としてこの新規生理活性ペプチドの受容体に対する特異性の検討を行った。構造上の類似性等今までに得られた知見より本ペプチドがカルシトニン(CT)もしくはカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の受容体を活性化している事が予測された。これらの受容体は通常の膜7回貫通型受容体と受容体活性修飾蛋白質(RAMP)とのサブユニット構造により形成されていることが知られているため、カルシトニン受容体(CTR)、カルシトニン受容体様受容体(CRLR)及びRAMP1、2、3のcDNAクローニングを行い、哺乳類発現ベクターに連結した後、COS-7細胞に受容体とRAMPを共発現させてペプチド刺激に対するCOS-7細胞内のcAMP産生量を測定した。その結果、本ペプチドはRAMPの有無に関係なくCTRを発現させるとCOS-7細胞のcAMP産生を強く活性化することが観察された。また反対に、CRLRを発現させた場合では何れのRAMPを発現させた場合でもcAMPの産生は活性化されなかった。以上の結果を踏まえ、この新規生理活性ペプチドをカルシトニン受容体刺激ペプチド(CRSP)と命名した。 次に第二段階としてCRSPのin vivoにおける作用の検討を行った。前段階の結果からCRSPは血中カルシウム濃度を調整する活性を持っていると推測されたので、ラットに本ペプチドを静脈内投与して血中カルシウム濃度の変動を調べたところ、カルシトニンと同様に投与後速やかに血中カルシウム濃度が低下することが観察された。また静脈内投与後の血圧変動を調べたところ、CGRPでは一過性の強い血圧低下が見られたのに対し、CRSPでは全く変動が見られなかった。 以上の結果から、CRSPは破骨細胞や腎上皮細胞に発現していることが知られているCTRを刺激して、血中カルシウム濃度の調節に関与していることが明らかとなった。
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