赤血球型5-アミノレブリン酸合成酵素(ALAS-E)は、X染色体連鎖鉄芽球貧血(XLSA)の原因遺伝子であり、XLSAでは顆粒状鉄沈着をもった環状鉄芽球が骨髄中に出現する。ALAS-E遺伝子破壊マウス(ALAS-E-/Y)が胎生11.5日齢(E11.5)までに重篤な貧血で死亡し、ALAS-E-/Yの有核赤血球に環状鉄芽球とは異なる細胞質内瀰慢性鉄沈着の観察を我々は見いだした(EMBO J 1999)。そこでALAS-E遺伝子破壊マウスの鉄過剰の様式がXLSAのRSのそれと異なることに着目し、鉄沈着時の細胞内動態と赤血球の分化成熟との関連を追究するため、ALAS-E遺伝子破壊マウスの卵黄嚢造血特異的部分レスキューを試みた。 卵黄嚢造血の有核赤血球においてヒトALAS-Eを特異的に発現させたトランスジェニックマウス(hAE Tg)を作製し、ALAS-E-/+と交配させることで、卵黄嚢造血のみ部分的にレスキューされたALAS-E変異体マウス(ALAS-E-/Y::hAE Tg)を得た。ALAS-E-/Y::hAE Tg胎児はE12.5まで致死が遅延され、成熟した有核赤血球の大部分が環状鉄芽球であることを認めた。ALAS-E-/Y個体では現れなかったRSが部分レスキューすることで、はじめて認められ、赤血球の分化成熟と鉄の細胞内動態が密接な関係にあることが示唆された。 また、一部のレスキューマウスではE16まで胎生致死が遅延され、成体型造血由来の環状鉄芽球が認められ、ALAS-Eの欠損が環状鉄芽球の出現に必要十分であることを示した。
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