研究概要 |
(結果) 癌抑制遺伝子PTEN(phosphaatase aand tensin homologue deleted on chromosome 10)の膜への局在およびPTENタンパクの安定性を制御しているC-末端をバイトにしてYeast Two-Hybrid法にてスクリーニングを行った。その結果、既知の4回膜貫通型分子、アクチン脱重合に関与する分子が同定された。COS-1およびU87MG細胞での過剰発現系にて4回膜貫通型分子とPTENの結合が免疫沈降法により確認された。この4回膜貫通型分子はN-末端に12アミノ酸、C-末端に10アミノ酸からなる細胞内ドメインを有していることから、N-末端、C-末端の細胞内ドメイン欠質変異体を作成してPTENとの結合を免疫沈降法にて調べた。結果、この4回膜貫通型分子はC-末端の細胞内ドメインを介してPTENと結合することがわかった。PTENはPhosphatidylinositol3-kinase(PI3-k)産物であるphosphatidylinositol3,4,5-triphosphate(PIP3)を脱リン酸化することで、Akt pathwayを抑制することが知られている。そこでPTENが4回膜貫通型分子と結合することでPTENのAkt抑制活性が影響を受けるのかを抗リン酸化Akt抗体によるウエスタンブロッティングにて検討した。その結果、PTENによるAktのリン酸化抑制は4回膜貫通型分子と共発現することで増強された。 (考察) Focal Adhesion Kinase(FAK)は細胞増殖、細胞分化だけでなく細胞運動も制御している。ファイブロネクチンからの細胞運動誘導シグナルはFAKの397番目チロシンの自己リン酸化を引き起こす。この自己リン酸化はSrcとの複合体形成だけでなく、PI3-k活性化にも必須である。PTENはこのFAKの397番目チロシンを直接脱リン酸化することでFAKの活性を抑制し、PIP3を脱リン酸化することで細胞運動を抑制する。最近、PTENのC-末端は膜への移行と安定性を制御していることが明らかになり、PTENのC-末端結合タンパクがPTENの活性および安定性を制御していると考えられる。今回PTEN結合分子として同定された4回膜貫通型分子はインテグリンと結合し、細胞運動を制御していることが報告されている。この経路にPTENがどの様に関与しているのか、FAKのリン酸化、MMPの活性発現に関与しているのかを今後検討する予定である。
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