テトラヒドロビオプテリン(BH4)は神経伝達物質であるカテコールアミン、セロトニンおよび一酸化窒素の生合成に関わるチロシン水酸化酵素、トリプトファン水酸化酵素、一酸化窒素合成酵素(NOS)に必須の補酵素である。我々はジーンターゲッティングの手法でBH4生合成の第2段階を触媒する6-ピルボイルテトラヒドロプテリン合成酵素の遺伝子を破壊し、BH4の不足をきたす特異な病態マウスを作成した。 ホモ接合体はメンデル則に従って出生するが48時間以内に全例が死亡した。ホモ接合体新生仔マウスの脳ではBH4がほとんど欠失するとともに、BH4の前駆物質に由来するネオプテリンの蓄積がみられた。ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンの含量は著明に減少していた。またフェニルアラニンの含量が数倍に達していたが、これはBH4がフェニルアラニン水酸化酵素の補酵素でもあるので高フェニルアラニン血症を生じたためである。 今後この新生仔マウスについて酵素活性の変化、組織化学的な解析を行う。また薬物投与および遺伝子工学的手法によるレスキューマウスの作成、胎仔の解析等を通じてBH4が神経系の発達におよぼす影響について検討していく予定である。
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