研究概要 |
本年度においては、HPVの関与の可能性が低いと考えられるヒト口腔扁平上皮癌の臨床材料を用い、細胞周期調節因子関連の癌抑制遺伝子産物の発現を免疫組織学的に検討した. 口腔内扁平上皮癌37例に関して、p14ARF、p16,p53、MDM2、pRbに対する各抗体を用い免疫染色結果と、症例ごとの臨床病理学的情報(年齢、性別、分化度、リンパ節転移の有無)との関連を検討した. 23例(62%)がp16陰性であり、残りはp16陽性であった.P14ARFは15例(41%)で陰性症例が見られ、内8例はp16も同時に陰性であった.Rbはp16強陽性であった1例にのみ陰性が見られた.MDM2及びp53はそれぞれ10例(27%)、13例(35%)で強陽性像を認めた.MDM2強陽性像はすべてp14ARF陰性症例に認められた.またp14ARF異常(陰性)とp53異常(免疫染色での強陽性像)には明らかな逆相関が認められた.また95%の症例で検索した癌抑制遺伝子のうち1つ以上の異常が認められ、特にリンパ節転移を伴う症例の半数でp16/Rbとp14ARF/p53 pathwayの両方で異常を認めた.以上より口腔癌においてp14ARFの発現低下はMDM2の活性化を引き起こしp53を不活化することでp53遺伝子異常と同等の影響を及ぼすことで発癌に関与しているとの知見が得られた. 今後は次年度に向け同様の免疫組織染色を肺の扁平上皮癌及び子宮頚癌においても行い、同時に子宮頚癌においてはPCR及びIn situ hybridization法を用いてHPVの関与の有無や型別を判定し、それらと細胞周期調節因子発現の差違なども検討していく準備が整っている.
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