研究概要 |
本研究ではAmpullary carcinomaにおける腫瘍細胞の増殖制御に関する因子としてp16,p21,p27,p53,pRb,Cyclin D1,Cyclin E,E2F-1およびβCateninの発現を免疫組織学的に調査し、臨床病理学的事項との関連を検索した。また、p16およびβCateninに関してはその発現異常に関してこれらをコードする遺伝子領域のLOH(Loss of Heterozygosity),PCR-SSCP,Direct SequencingによるMutation analysis,およびプロモーター領域のHypermethylationについて検索を行った。その結果、免疫組織学的検索ではp16蛋白の失活が約60%の症例に認められ、細胞増殖能の指標であるMIB-1陽性率は正常発現群に対し喪失群において有意に高値であり、同様に後者においてE2F-1の発現が有意に高値であった。また、MIB-1陽性率とE2F-1の発現との間に正の相関が認められた。しかし、これらの2群において、腫瘍分化度との関連は認められず、また、Coxの比例ハザードモデルを用いた生存分析による術後予後の検討でも優位な差は認められなかった。p16の失活のメカニズムに関しては約40%にsequence changeが認められ、これらの症例においては全例にp16領域のLOHが認められ、Homozygous Deletionおよびプロモーター領域のHypermethylationは確認されなかった。βCateninの核内集積は約5%の症例の外科切除標本に散在性に認められたのみで、明らかなsequence changeは認められなかった。これらの結果からAmpullary carcinomaの腫瘍細胞の増殖制御にはp16の失活とE2F-1の発現亢進が関与していることが明らかとなった。今後、さらにAmpullary carcinomaの培養細胞株を用いて、細胞周期蛋白の発現異常と転写因子E2F-1の発現の関連を検索し、遺伝子導入による腫瘍細胞の増殖制御に関して検討したいと考えている。
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