研究概要 |
FasはTNF receptor familyに属するtransmenbrane proteinで、Fas ligand(FasL)とcross-linkしapoptosisのシグナル伝達に関与する。Fasの異常はリンパ球細胞の蓄積をもたらす。甲状腺リンパ腫は、慢性甲状腺炎を背景に発症するリンパ腫である。Fas遺伝子の異常が甲状腺リンパ腫の発症に関与するかどうかを知るために、1995-98年に隈病院で手術・生検を受けた甲状腺リンパ腫26例、慢性甲状腺炎11例のFas遺伝子のmutationを検索した。症例からRNAを抽出しFasのopen reading frameをRT-PCR, cloning, sequencingした。Fas遺伝子のmutationはリンパ腫17/26例(65. 4%)、慢性甲状腺炎3/11例(27. 3%)と高率に認め、リンパ腫に有意に多く認めた。特徴的なmutationとして1095ist A 10例,exon8del8例が認められた。Fas遺伝子のmutationは全例death domainに変異をもたらすことから、loss of function mutationと考えられた。実際、変異FASを培養細胞にtransfectionを行い、これら変異Fasが機能喪失型の変異であることを確かめた。Mutationをもったリンパ球はFasLによるapoptosisに抵抗性を持ちgrowth advantageを獲得すると考えられ、lymphomagenesisに関与すると推察した。われわれはさらに、甲状腺リンパ腫以外のリンパ腫やいくつかの上皮系腫瘍についても解析を行った。NK cellのリンパ腫である鼻腔リンパ腫においても約50%の変異を認めた。Fas/FasL系のが制御に重要な役割を果たす精巣腫瘍においても高率にFasの遺伝子異常が認められた。
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