本年度は予算使用が11月以降に許可されたこともあり、家族性胃癌の解析よりも一般胃癌の解析が主となった。その結果、分化型胃癌において染色体5番長腕(5q)のコピー数減少がDNA aneuploidy(DA)である性質と高度に相関していることをつきとめ論文として投稿し、国際的専門誌であるCytometry誌にアクセプトされ、まもなく出版される予定である。また、胃癌解析を低(未)分化型胃癌に拡大し、上記5q減少は低分化型胃癌においてもDAと有意に相関することをつきとめた。さらに、組織型、発生部位と特定のゲノムコピー数異常が有意に相関することをつきとめ、論文として投稿中である。また、参考のためにEpstein-Barrウィルスと胃癌の関連を調査し、同ウィルス関連胃癌の頻度が山口において5.7%である(対象症例140例)ことがわかった(検索続行中)。以上胃癌研究は成果をあげており、現在も多角的に実行中であるが、家族性癌に特異性の高い有力領域は今のところ得られていない。解析方法として、現法のcomparative genomic hybridizationのみならず、より精密な方法を模索している。 濃厚な家族内集積を認める例は少ないため来年度はさらに関連施設に協力を求め、少しでも多くの例を解析し、家族性にみられる胃癌に特徴的なゲノムコピー数異常領域を1ケ所でも明らかにしたい。また、パラフィンブロック材料を多数病理に保管されているため、それらについて家族性胃癌かどうかを調べ、多角的に検討する予定である。
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