研究概要 |
潰瘍性大腸炎(UC)関連の癌、異形成におけるアポトーシスと細胞増殖の動態、およびその背景の分子機構を解析するため以下の検討を行なった。 UCの再生上皮26例、軽度異形成14病変、高度異形成16病変、UC関連癌10病変と正常の大腸粘膜20例、軽度異型腺腫17例、高度異型腺腫22例、癌15例とを用いた。細胞増殖マーカーKi67,細胞回転制御因子p53、p21、p27、アポトーシス抑制因子survivin.Bcl-2を染色し、上皮での発現を陰窩の上半分と下半分に分けて定量化した。また、上皮のアポトーシスをニックエンドラベリング法と、single-strand DNAの免疫染色の2つの方法で解析した。 UCの軽度異形成では、p27、p53、Bcl-2が、高度異形成では、p27とBcl-2が、陰窩の下半分で強く発現したが、腺腫では軽度異型、高度異型ともp27、p53は陰窩の上半分で強く発現し、Bcl-2は上下の発現の差がなかった。survivinはUCの異形成では陰窩の上下で発現の差がないのに対して、腺腫では陰窩の上半分に強く発現していた。アポトーシスはUCの異形成では上下の差がないが、腺腫では陰窩の上半分で高値を示した。UC関連の癌と通常の癌との間には明らかな違いを見出せなかった。 UCの異形成ではアポトーシスと、それに関わる細胞回転制御因子p53、p27とアポトーシス抑制囚子survivin,Bcl-2の発現パターンが通常の腺腫と異なっており、UCを背景に発生する異形成の発生経路が、通常の大腸腺腫とは異なると考えられた。
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