平成12年度は種々の臓器に発生した良悪性平滑筋腫瘍(計36例)の凍結腫瘍組織を収集した(平滑筋肉腫19例(軟部14、子宮2、腎1、膀胱1、肝1)、平滑筋腫17例(子宮12、胃3、腎2))。組織像を顕微鏡下で確認後、平滑筋肉腫については種々の平滑筋マーカー(desmin、actin、calponin、caldesmon)に対する抗体を用いて免疫組織化学を行い、腫瘍細胞の平滑筋への分化を確認した。それらの腫瘍組織からRNAを抽出し逆転写反応によりcDNAを合成後、HMGI-C遺伝子のexon1〜3及びexon1〜5を増幅の対象としたPCRによって各腫瘍におけるHMGI-C遺伝子転写産物の発現を検索した。当初の予想に反し、検索したほとんどの腫瘍では内在性コントロールとしてのGAPDH遺伝子産物が検出されたにもかかわらずHMGI-C遺伝子産物は検出されなかった。なお発現が認められた腫瘍(子宮平滑筋肉腫1例)では増幅遺伝子産物が複数検出され、自動シークエンサーによる塩基配列の解析によりそのうちの一つは異常のないHMGI-C遺伝子由来の産物であることが確認された。この結果から今回検索した多くの腫瘍ではHMGI-C遺伝子産物の発現が極めて低いか、あるいはその特殊な遺伝子構造のために通常のPCRでは産物が増幅されないことなどの技術的問題も示唆された。今年度はその後者の可能性を考慮し、さらなるPCR条件の最適化やnested PCR法を実施することで検出効率の向上を図る。さらに、検出されたPCR増幅産物についてはその塩基配列を詳細に解析し、平滑筋腫瘍での遺伝子異常の検索を継続する予定である。
|