1)生理食塩水に浮遊させたヒト前立腺癌細胞株PC3-MM2(5万個/0.05ml)をヌードマウスの前立腺注入し、同所性移植を試みた。3から4週で移植部位に5mmから10mmの腫瘍が認められた。大動脈周囲リンパ節に腫瘍の転移がみられたが、X線および組織学的検索で骨転移は認められなかった。前立腺部の腫瘍はホルマリン固定後、パラフィン包埋された。 2)大動脈からの血流を介した転移性骨病変を得るためにPC3-MM2を浮遊させた生理食塩水(50万個/0.05ml)をヌードマウスの左心室に注入した。しかし、PC3-MM2は肝臓や肺に多数の転移性腫瘍を形成し、マウスが短期間で死んでしまうため、転移性骨病変は得られなかった。そこで、脛骨の骨端にPC3-MM2を浮遊させた生理食塩水(2万個/0.02ml)を直接注入することにより、異所性移植を試みた。X線上、3から4週で移植部位に骨破壊性と思われる病変が認められ、4から5週では肉眼的にも明らかな腫瘍が形成された。マウスは5週で屠殺され、頸骨部の腫瘍はホルマリン固定、EDTA脱灰後、パラフィン包埋された。HE標本上でPC3-MM2は骨を破壊するように増殖しており、脛骨周囲の筋肉内にも浸潤していた。腫瘍と骨が接している部分では破骨細胞が散見された。前立腺および頸骨における腫瘍細胞の形態に違いはみられなかった。 3)一部の頸骨部腫瘍からは再度細胞株を得ており、骨に対してはより親和性を増し、他臓器に対しては親和性が少なくなった可能性のあるこの細胞株を用いて左心室からの転移性骨病変の形成を現在試みている。
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