炎症、腫瘍組織における免疫細胞の活性化状態は、従来より研究されてきた抗原提示やサイトカインによる活性化制御に加えて、局所の好中球や組織の細胞から産生される酸化ストレスによる影響を受けると考えられる。本研究では酸化ストレスの免疫細胞のシグナル伝達機構に与える影響について検討を行った。 生体内での免疫細胞に対する酸化ストレスの影響をin vitroの系においてmimicするために、末梢血リンパ球あるいはリンパ球細胞株に酸化ストレスとして過酸化水素、あるいは他の酸化剤を添加するという系を用いて解析した。 Tリンパ球において抗原受容体(TCR/CD3)のco-receptorとなるCD4分子が抗原刺激によるT細胞の活性化に伴いT細胞表面からdown-regulateされるが、この際に酸化ストレスが共存するとCD4分子のdown-regulationが抑制されるという結果を得た。また、その結果、酸化ストレス存在下ではこの機構を介した抗原刺激によるT細胞活性化の増強が生ずることが判明した。更にchimera分子を用いての解析の結果、酸化ストレスによるT細胞活性化に伴うCD4 down-regulationの抑制作用にはCD4分子の細胞外ドメインが必須であることが明らかとなった。 これらの解析結果は酸化ストレスによる免疫細胞活性化調節機構には、1)前年度に報告した酸化ストレスによるシグナル伝達分子の直接の活性化に加え、2)T細胞では酸化ストレスがCD4分子の発現をaberrantに制御することにより抗原受容体からのシグナルを増強させるという免疫応答の修飾・制御機構が存在することが明らかとなった。
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