老化とフリーラジカルとの関係が明らかにされつつあり、最近ではDNA損傷と老化との関係が示唆されている。しかし雌雄差についての報告はない。さきに老化促進モデルマウス(SAMP8)にニトロキシドラジカルを持つスピンラベル剤を腹腔内投与し、頭部のニトロキシドラジカルのシグナルの変化をL-バンド電子スピン共鳴装置を用いて分析した結果、加齢に伴う半減期の変化は雌雄間で異なることを明らかにした。そこで活性酸素により生成されるDNAの酸化物である8-ヒドロキシ-2'-デオキシグアノシン(8-OHdG)の生成を雌雄SAMP8脳および肝臓について調べ、加齢に伴うDNA損傷の変化を調べた。雌雄SAMP8脳内の8-OHdG生成は加齢に伴い増加した。対照であるSAMR1雄性においても加齢に伴い脳内の8-OHdG生成は増加した。SAMP8とSAMR1を比較すると雄性では3〜4ヶ月齢においてSAMP8の8-OHdG生成がSAMR1より増加しており、雌性では7〜12ヶ月齢においてSAMP8の8-OHdG生成がSAMR1より増加していた。肝臓では加齢に伴うDNA損傷の増加は認められなかった。しかし、SAMP8とSAMR1を比較すると3〜4ヶ月齢、7〜12ヶ月齢ともSAMP8のほうがSAMR1より8-OHdG生成は増加していた。以上より脳内のDNA損傷は加齢に伴い増加すること、雄性SAMP8では3〜4ヶ月齢でSAMR1よりDNA損傷が増加していたこと、雌性SAMP8では7〜12ヶ月齢でDNA損傷が増加していたことから、8-OHdGの生成は老化の進行過程または加齢に深く関わっていることが示唆された。また肝臓では雌雄ともSAMP8の方がSAMR1よりDNA損傷が増加していたことから、SAMP8はSAMR1より加齢に伴い酸化的ストレスを肝臓に強く受けていることが考えられた。
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