ヒトヘルペスウイルス8型の感染病理に関する研究

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12770120
• 研究機関: 国立感染症研究所
• 研究代表者: 片野 晴隆 国立感染症研究所, 感染病理部, 研究員 (70321867)
• キーワード: ヒトヘルペスウイルス8(HHV-8) / カポジ肉腫 / 原発性体腔液性リンパ腫(PEL) / 多巣性キャッスルマン病(MCD) / ELISA / 血清抗体 / 潜伏感染 / 増殖感染

研究概要

1、ヒトヘルペスウイルス8(HHV-8)の血清診断系の確立
HHV-8はエイズに合併したカポジ肉腫から発見された新しいウイルスである。感染した人には血清中にこのウイルスに対する抗体ができるが、我々はHHV-8の高感度な血清抗体検査を開発する目的で血清抗体が認識する蛋白の同定を試みた。HHV-8感染細胞株のcDNAライブラリーから免疫スクリーニングでカポジ肉腫患者血清と反応する14個の蛋白の遺伝子を増幅した。そこから蛋白を人工合成し、ウエスタンブロットで患者血清と反応させた結果、K8.1,ORF59,ORF65,ORF73の4つが抗原蛋白であることが明らかになった。我々はこの蛋白をELISAの抗原に用い、高感度な血清抗体検査の系を完成した。このELISAを用い日本人正常人1004名の血清を検索した結果、1.4%が陽性であることが明らかになった。また、カポジ肉腫患者では100%、他の疾患の患者では1.9%であり、HHV-8とカポジ肉腫の関連が血清疫学的にも明らかになった。
2、カポジ肉腫、原発性体腔液性リンパ腫、多巣性キャッスルマン病におけるHHV-8関連蛋白の発現
HHV-8はカポジ肉腫の他に原発性体腔液性リンパ腫primary effusion lymphoma(PEL)、多巣性キャッスルマン病multicentric Castleman's disease(MCD)から検出される。我々はHHV-8のコードする9つのウイルス蛋白に対するウサギポリクローナル抗体を開発し、これらの疾患の病理組織切片上でウイルス蛋白の発現を検索した。その結果、カポジ肉腫、PELではHHV-8の潜伏感染蛋白が主に発現しているのに対し、MCDでは増殖感染蛋白の発現が目立った。これらの結果からHHV-8の潜伏感染がカポジ肉腫、PELの形成に関わっている可能性が示唆された。

研究成果

• [文献書誌] Katano H,Suda T,Morishita Y, et al.: "Human herpesvirus 8-associated solid lymphomas that occur in AIDS patients take anaplastic large cell morphology."Modern Pathology. 13. 77-85 (2000)
• [文献書誌] Katano H,Sato Y,Kurata T, et al.: "Expression and Localization of Human Herpesvirus 8-Encoded Proteins in Primary Effusion Lymphoma, Kaposi's Sarcoma, and Multicentric Castleman's Disease."Virology. 269. 335-344 (2000)
• [文献書誌] Katano H,Iwasaki T,Baba N, et al.: "Identification of Antigenic Proteins Encoded by Human Herpesvirus 8 and Seroprevalence in the General Population and among Patients with and without Kaposi's Sarcoma."Journal of Virology. 74. 3478-3485 (2000)
• [文献書誌] Kondo Y,Izumi T,Yanagawa T,Kanda H,Katano H,Sata T: "Spontaneous regression of Kaposi's sarcoma occurring in a Japanese elder woman with the absence of human immunodeficiency virus infection. "Pathology International. 50. 340-346 (2000)
• [文献書誌] Katano H,Sata T: "Human herpesvirus 8-Virology, Epidemiology and Related Diseases-."Japanese Journal of Infectious Diseases. 53. 137-155 (2000)
• [文献書誌] Katano H,Sata T,Mori S: "AIDS lymphoma : Its virological aspects."Current Topics of Microbiology and Immunology. (印刷中). (2001)
• [文献書誌] 片野晴隆: "炎症と免疫「HHV-8とリンパ増殖性疾患」"先端医学社. 8 (2000)
• [文献書誌] 森茂郎,片野晴隆: "新悪性リンパ腫アトラス「免疫不全に伴うリンパ腫」"文光堂. 3 (2000)