研究概要 |
大腸異常陰窩巣(aberrant crypt foci,ACF)は大腸前癌病変と考えられている。2-amino-1-methyl-6-phenylimidazo[4,5-b]pyridine(PhIP)誘発ラット大腸ACF、腺腫および癌のβ-catenin遺伝子の変異について検討した。7例の腺腫全て(100%)と12例のうち6例(50%)の癌にcodon32-34に変異を認めた。ACFでは46例中14例(30%)で、11例はcodon34に集中しcodon45,47,56にも見られた。変異率は腺腫で有意に高く、腺腫発生と癌発生に異なるメカニズムの存在が示唆された。 分離腺管をhexosaminidase(Hex)の染色性によってACFと正常腺管に分類した。さらに、単一腺管からRNAの単離とcDNAの作製を行い、β-actinを内部標準として、定量的reverse transcription-polymerase chain reactionにより、hex αおよびβ subunit(Hexa,Hexb)の発現レベルを検討した。ACFでは正常腺管に比べて、Hexa,Hexbそれぞれ0.266倍および0.131倍に有意に発現量が低下しており、転写レベルでの発現あるいはmRNA分解調節の異常が考えられた。 今後、ACFにおける種々の癌遺伝子等の発現パターンを検討する。また、IRES(内部リボソーム結合部位)下流にgreen fluorescent proteinを共発現させるretrovirus vectorと、gag-pol+vesicular stomatitis virus-G proteinを発現するpackaging plasmidを293細胞にtransfectionし、ウイルス粒子を大腸粘膜下に移植して実体顕微鏡下で感染効率を検討する。
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