研究概要 |
ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)はグラム陽性嫌気性桿菌の病原細菌であり、この菌は、さまざまな毒素タンパク質を産生し、毒素タンパク質の協調的作用によりガス壊疽、食中毒、腸炎を引き起こすことが知られている。これらの病原因子を包括的に解析することは、本菌の病原性を理解する上で非常に重要である。そこで平成12年度は通常培地であるTSFとより宿主へ感染した条件に近い細胞培養用培地RPMI1640での培養上清タンパク質のプロテオーム解析を行ない、病原因子の産生様式の検討を行った。その結果、ウェルシュ菌においてTSFよりもRPMI1640で培養した方が培養上清に存在するタンパク質量が増加していた。また、培養上精中の溶血活性、レシチナーゼ活性を調べたところ、両活性ともRPMI1640を用いた培養上清の方が活性が高かった。次に、各々の培養上清タンパク質を二次元電気泳動で解析したところ、TSFでは銀染色によって約60個のスポットが、RPMI1640では約100個のスポットが検出された。また二次元電気泳動により分離されたそれらのタンパク質をリシルエンドペプチダーゼによってゲル内消化し、生じたペプチド混合物の質量をTOF-MSによって測定し、この結果を用いてウェルシュ菌のデータベースより遺伝子同定を試みたところ、MSによって十分なピークが得られたものの約7割が同定できた。その中にはすでに病原因子と報告されているcollagenase,theta-toxin,alpha-toxinなども存在していた。同様に、細胞内タンパク質についても検討を行い、二次元電気泳動によっていくつかのスポットに発現量に違いがみられ、そのタンパク質をコードしている遺伝子の特定を行った。その結果、リボースの代謝に関与していると思われる遺伝子群の発現に違いがあった。
|