ウェルシュ菌では二成分制御系の一つであるVirR/VirSシステムが多くの病原因子の発現を総括的に調節していることが知られている。網羅的にVirR/VirSシステムによって発現が調節されているタンパク質を明らかにするために野生株とvirR変異株を用いてプロテオーム解析を行った。培養上清を用いて2次元電気泳動を行い、野生株とvirR変異株の培養上清を用いた2-Dゲル上で強度に変化のあったスポットを同定し、質量分析機を用いた方法で遺伝子を特定した。その結果、VirR/VirSシステムによって正に調節されている7種類のタンパク質と負に調節されている8種類のタンパク質を特定した。その中には、すでに病原因子と報告されているα毒素やθ毒素が存在していた。これらタンパク質は転写レベルにおいて調節されているかどうかを確かめるためにノーザン解析を行った。15種類のうち9種類の遺伝子は転写レベルにおいてVirR/VirSシステムによって調節されていたが、残りはそうではなく、タンパク質の翻訳、修飾の段階で調節されていることが示唆された。また、同時に野生株とvirR変異株を用いた培養上清のプロテオームによってVirR/VirSシステムが直接的に発現調節している新規のプロテアーゼを同定した。培養上清中より新規プロテアーゼを精製し、そのプロテアーゼがシステインプロテアーゼであることを特定し、ウェルシュ菌の新規病原因子である可能性を示した。
|