研究概要 |
メチシリンおよびバンコマイシン耐性に関与する因子の解明について平成12年度の研究計画に従い以下に示す2つの面から検討した。 (1)バンコマイシン耐性菌の分離および性状の検討 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)からバンコマイシンによる誘発突然変異によりバンコマイシン耐性変異株の分離を試み、一株耐性菌の分離に成功した。親株との性状の変化について検討し、以下のような結果を得た。1)バンコマイシン感受性が親株にくらべて8倍減少し、メチシリンの感受性も2倍減少した。transglycosylase活性を阻害する薬剤であるmoenomycinの感受性も8倍減少した。2)電子顕微鏡像から耐性菌の細胞壁の肥厚化が認められた。3)細胞壁ペプチドグリカンのHPLCによる構造解析の結果、耐性菌ではペプチドグリカンの架橋度減少およびグリカン鎖長の増大が認められた。4)ペニシリン結合タンパクの発現量には変化は認められなかった。以上の結果よりグリカン鎖形成に関与すると考えられるtransglycosylase活性の変化がバンコマイシン耐性に関与しているのではないかと考えられた。 (2)細胞壁合成系に関与する遺伝子の同定および不活性化 細胞壁合成に関与していると考えられる因子(murA-Z,glmU,glmMなど)について遺伝子の検索後その情報を基にプライマーを作製し、PCRを行いその中のいくつかの因子について塩基配列を決定した。その中で、すでに我々が同定したメチシリン耐性に影響を及ぼす因子であるfmtAとタンパクレベルで相同性のある遺伝しflpのknock out mutantを作製したがメチシリン、バンコマイシンの耐性に変化が認められなかった。
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