研究概要 |
ウェルシュ菌ε毒素は、トリプシンやキモトリプシン、本菌自体が産生するλ毒素(サーモリシン様プロテイナーゼ)によって、N-末端領域とC-末端領域が共にプロセシングされて活性化される。平成12年度に4種の変異毒素(PD,ΔN-PD,ΔC-PD及びΔNC-PD)を用いて、εプロトキシンのC-末端領域のプロセシングが細胞毒性・致死活性の発現に必須であること明らかにした。 今年度はε毒素の標的の一つと考えられている神経細胞の細胞膜との反応性を調べた。^<125>IラベルしたΔC-PDとΔNC-PDを、ラット脳シナプトソーム膜と反応させたところ、それぞれ約200kDaと約180kDaのSDS耐性高分子量複合体を形成した。一方、細胞毒性・致死活性を示さないPDとΔN-PDは、高分子量複合体を形成しなかった。また、^<125>I-ΔC-PDと^<125>I-ΔNC-PDを種々の濃度で混合して高分子量複合体を形成させたところ、約200kDaと約180kDaの間にブロードなバンドが確認されたことより、高分子量複合体は数分子の毒素からなることが示唆されたが、解像度が低すぎて何分子の毒素により高分子量複合体が形成されているのか判明しなかった。そこで解像度を上げるために、1毒素分子あたり1分子の^<32>Pでラベルした変異毒素(^<32>P-ΔC-PDと^<32>P-ΔNC-PD)を調製し、それらを種々の濃度で混合しシナプトソーム膜と反応させ、DNA sequence用ゲル装置を用いた高解像度SDS-PAGEを行った。その結果、2つのホモマルチマーの間に6つの分離したバンドが検出された。これらのことから、C-末端領域がプロセシングされて活性化したε毒素はラットシナプトソーム膜内で7量体を形成することが明らかになった(Miyata et al. (2001) J. Biol. Chem. 276:13778-13783)。
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