劇症型A群レンサ球菌(GAS)感染症(STSS)の原因菌として高頻度に分離されるM3型GASおよびより低頻度に分離されるM4型およびM12型GASについて、それらのマウス致死毒性と培養細胞付着性の関係について検討した。M3型およびM12型GASは培養細胞に対して低付着性、M4型GASは高付着性を示した。用いたM3型菌株においては各菌株間でマウス致死性が最大100倍と大きく異なっていたが、その差異は培養細胞付着性の高さと逆相関し、より低付着性の菌株ほど高い病原性を示した。このことからある種のM型菌ではマウス致死性にGASの付着性の低さが重要な役割を果たす可能性が示唆された。この付着性に関わるGAS因子検討のため、GASの細胞付着因子として知られるM蛋白質、フィブロネクチン結合蛋白質(FBP)、夾膜因子についてそれぞれの発現状況を調べたところ、M3型菌では、マウス高致死性の2菌株のFBPの発現パターンが、低致死性菌株のそれと大きく異なっており、この差異がM3型菌間の培養細胞付着性の差異に影響すること示唆された。 一方、分娩時に発症したSTSSの菌株(SD株)について、その性質を非STSS由来株(SF)および通常のSTSS由来株(ST株)と比較した。SD株はM1型、SF株はM4および12型、ST株はM3型を中心する菌株群であり、SD株での高頻度のM1株の分離が有意であるかどうかについて興味が持たれた。SD株はSF株に比べて、培養細胞付着性、スーパー抗原産生能およびヘモリジン産生能は低く、マウス致死性、腹腔投与後のマウス血流侵入性は高く、夾膜因子産生量については一定の傾向を示さなかった。これらの結果をST株と比較した場合、ST株ではへモリジン産生能が高い以外、同様の結果であり分娩時発症STSS株と通常のSTSS株が類似した性質を持つことが明らかとなった。
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