研究概要 |
本邦での1980年以降のC型インフルエンザウイルスは、ヘムアグルチニン・エステラーゼ(HE)遺伝子の塩基配列から3つの系統のウイルス[山形/81系統、愛知/81系統、ミシシッピー/80(MS/80)系統]が共存しつつ蔓延している。我々がおこなった1947〜92年に分離された34株のC型分離株のNS遺伝子の系統樹解析から、NS遺伝子は2つのグループ(A,B)に分類でき、HE遺伝子はどの系統に属するにせよ、1980年以前の古い分離株のNS遺伝子はAグループに、1985年以降の新しい分離株の同遺伝子はBグループに所属することがわかっている。この知見は、BグループのNS遺伝子を獲得したリアソータントだけが生きのこっていることを示唆する。換言すれば、 「C型ウイルスのヒト社会での拡がりやすさを規定しているもっとも重要な因子は、NS遺伝子産物(NS1,NS2)である」可能性が浮上してきたことになる。 そこで今年度は未解析の最近(1993年以降)の分離株の解析を行った。1993年以降、併せて63株のC型ウイルスが山形市と仙台市で分離されている。抗HE単クローン抗体による抗原解析によれば、山形/81抗原グループが51株、愛知/81抗原グループが3株、MS/80抗原グループが9株である。これらの分離株から山形/81系統9株、愛知/81系統1株、MS/80系統9株を選びNS遺伝子の塩基配列を決定し系統樹の作成を行った。その結果、AグループのNS遺伝子をもつ株が3株(宮城/7/93、宮城/4/96、宮城7/96)みつかったが、残り16株のNS遺伝子はBグループに所属していた。BグループのNS遺伝子をもつ株が優位にヒト社会で広がっていることを実証することができたものと考えている。
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