成人T細胞白血病(ATL)は、日本に多くの保有者を持つヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-I)の感染によって引き起こされる腫瘍性疾患であるが、化学療法剤に抵抗性であるため、極めて予後の悪い悪性腫瘍とされてきた。一方で種々の臨床的観察から、宿主細胞性免疫、特にキラーT細胞(CTL)の抗腫瘍効果が示唆されてきた。そこで宿主免疫を応用した治療法開発のために、これまで我々が開発したATLの疾患動物モデルを用い、HTLV-I腫瘍に対して生体内で抗腫瘍効果を有するCTL認識抗原およびその主要エピトープを新規に同定した。また、この腫瘍抗原エピトープの合成ペプチドを免疫原とし、適当なアジュバンドを用いることによって免疫正常ラットにペプチド特異的なCTLが誘導可能であること、また、誘導されたCTLは生体内におけるHTLV-I感染腫瘍細胞の増殖を強く抑制しうることを明らかにした。これらの結果は、我々の同定したエピトープが単独で腫瘍拒絶抗原として働きうること、さらに、本実験系がワクチンの開発モデルとして、極めて有用であることを示している。
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