前年度に確立したリバースジェネティクスを用いてリコンビナントパラインフルエンザ2型ウイルス(rPIV2)とV蛋白特異的領域(約60アミノ酸)を欠損させたウイルス[rPIV2V(-)]を作製し、これらのウイルスの性状を比較した。野生株様のrPIV2は、インターフェロン(IFN)シグナリングにおけるSTAT2のプロテオソームディグラデーションもしくは蛋白の翻訳阻害によりIFNに抵抗性を示したが、一方rPIV2V(-)はIFNに対して高い感受性を示した。このことからV蛋白のカルボキシ末端に位置するその特異的領域がIFNシグナリング阻害に非常に重要な領域であることが示唆された。また、Vero細胞を用いての感染実験において、感染細胞内でのウイルスmRNA及び蛋白合成量は両者間でほとんど差はみられなかったが、その培養上清中にリリースされたrPIV2V(-)粒子数は100〜200倍減少した。さらに、免疫電顕により確認されたrPIV2V(-)Virionの径は有意に大きくなっており、V蛋白のその領域はウイルス粒子のassemblyにも関与していることが示唆された。また、本年度はワクチン化及びウイルスベクター化に向けてT7ポリメラーゼの供給源としてワクシニアウイルスを用いない系を確立し、M蛋白のカルボキシ末端119アミノ酸を欠損させたウイルス(rPIV2ΔM119)を作製しM蛋白の機能について調べた。rPIV2ΔM119は、培養上清中へリリースされるVirionの数が著しく減少し、その値は先に示したrPIV2V(-)よりも10倍程度低かった。さらにrPIV2ΔM119感染細胞に、M蛋白発現細胞を加えて供培養することにより、リリースされるVirion量が10倍程度増加した。これらの結果からM蛋白がVirionのassemblyおよびBuddingに関与していることが示唆された。
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