我々は、C型肝炎ウイルスのコア蛋白質とCDKインヒビターであるp21とをHeLa細胞に共発現させると、p21の発現量が著しく抑制されることを見い出した。本研究ではp21と結合し、その安定性に関与することが知られているサイクリン、CDK、PCNAの関与について検討した。まず、サイクリン/CDK及びPCNAと結合できないp21の変異体を作製した。これらの変異体をコア蛋白質と共にHeLa細胞に発現させると、全て野生型p21と同じく、その発現は抑制された。また、p21はPCNA存在下では安定化されるが、この時さらにコア蛋白質を加えるとPCNAによる安定化は認められなかった。よって、コア蛋白質によるp21の発現抑制にはサイクリン/CDKは関与しておらず、またPCNAにより阻害されないことが明らかになった。次にp21の発現量の変化を調べるためHeLa細胞を^<35>S-メチオニンで標識した。高濃度の^<35>S-メチオニンを用い短時間標識した結果、コア蛋白質存在下ではp21はほとんど標識されず、コア蛋白質の作用はp21の急速な分解か、あるいは合成の抑制であることが示唆された。 p21の発現抑制に必要なコア蛋白質の領域を調べるため、様々な大きさのC末端欠失変異体を作製した。これらコア蛋白質変異体をp21と共に細胞に発現させ、p21の発現量の変化を調べた。その結果、183アミノ酸からなる変異体では全長(191アミノ酸)と変らずp21の発現抑制が認められたが、173アミノ酸と150アミノ酸からなる変異体ではその作用が認められなかった。よって、コア蛋白質によるp21の発現抑制には、174から191アミノ酸のC末端領域が必要である事が明らかとなった。
|