本研究は、新たに発見された胃腸炎関連ウイルス、愛知ウイルスの非構造タンパク質の機能を調査し、下痢発症の機構についての知見を得ることを目的としている。本年度は愛知ウイルスの感染性cDNAクローンを用いて、ウイルス増殖におけるL、2Aタンパク質の役割を調査した。 まず、愛知ウイルスのLがL/VP0間を切断するプロテアーゼであるかどうかを調べた。in vitroで合成したL-VP0タンパク質にはL/VP0間を切断するようなプロテアーゼ活性は認められなかったが、in vitroで合成した3CDによりL-VP0タンパク質は分解された。また、aa170-171に存在するピコルナウイルス3C^<pro>の認識配列Gln-GlyをPro一Glyに変えると3CDによる切断は起こらなかった。これらのことから、愛知ウイルスのLが170アミノ酸から成り、3C^<pro>によりVP0から切り出されることが示唆された。 さらに、感染性cDNAクローンのL、2Aタンパク質コード領域に欠失変異を導入し、ウイルス増殖に与える影響を調査した。その結果、L領域欠失変異体、2A領域欠失変異体ともにウイルスRNAが複製しなかったことから、愛知ウイルスのLおよび2AがRNA複製に必須のタンパク質であることが示された。ピコルナウイルス科の中では、愛知ウイルス以外にアフトウイルスとカルジオウイルスがLタンパク質をコードしているが、アフトおよびカルジオウイルスのLはウイルスRNAの複製に必須のタンパク質ではないことが報告されている。従って、愛知ウイルスのLタンパク質はピコルナウイルスの中ではユニークな機能を有していることが明らかとなった。
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