B細胞上に発現するCD72は抑制性レセプターの特徴であるITIM配列を有し、抗原受容体(BCR)刺激によりITIMがリン酸化を受け、SHP-1をリクルートしてB細胞の活性化を抑制する。CD72によりリクルートされたSHP-1の機能について詳細な解析を行った。他の抑制性レセプターが存在せず、BCRを再構成させたミエローマ細胞株にCD72を導入した株を用いて、BCR刺激によりCD72にリクルートされるSHP-1が脱リン酸化する標的分子の同定を行った。CD72導入株でチロシンのリン酸化が減弱している分子としてBCRを構成するシグナル伝達分子Igα/Igβ、チロシンキナーゼであるSyk、アダプター分子であるSLP-65が確認されたが、BCR近傍のシグナル分子であるLynのリン酸化の程度に変化はなかった。SHP-1のドミナントネガティブ型のものをさらに導入するとIgα/Igβ、Syk、SLP-65のリン酸化の抑制は解除される傾向にあった。しかし、CD72を導入していないミエローマ細胞株にドミナントネガティブ型SHP-1を導入してもIgα/Igβ、Syk、 SLP-65などのリン酸化の程度はほとんど変わらなかった。これらのことよりBCR刺激によりSHP-1を活性化するにはCD72のような共抑制性レセプターが必要であることが明らかになった。また、活性化されたSHP-1はIgα/Igβ、Syk、SLP-65などBCR近傍のシグナル分子を脱リン酸化することによりBCRシグナルを負に制御して、過剰なB細胞の活性化を抑制していることが示唆された。
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